馬鹿と無能の交差点。『スクランブル』感想。バレあり。
珍しく日本版の方がお洒落。
しかしどちらも売りは同じく製作陣の名前。
そんな低めのハードルをくぐりにくぐる。
映画界のブラック企業「96時間」スタッフ!
「全国公開」にだまされるな。
全国が「後悔」する。
失策失速失笑カーアクション!!!
映画界にはしばしば革命が起きる。
『タイタニック』『ターミネーター2』『アバター』などのキャメロンによる映像革命。
全てを塗り替えた『マトリックス』革命。
もはや存在自体が革命家なノーラン作品。
などがよく話題にあがる。
しかしその革命は稀にB級映画が起こすこともある。
それが『96時間』革命だ。昇天しかねない上記台詞。親父、大暴れ。
俺のオールタイムベスト3には入る。
ちなみに本作公開は2008年。『ダークナイト』や『アイアンマン』といい化け物級な当たり年だ。
「引退したヤバいやつが現場復帰する」というB級映画御用達の筋書きを奇跡的なまでに綺麗にまとめ上げた至高の作品である。
ある種のひとつの到達点とも言える。
しかし映画とは商売でもある。
当然2匹目のドジョウ狙いで類似作品が連発された。
具体例は出さないが、やたら出来の悪い劣化作群が。
それもまぁ他社が真似するのは理解できるのだが
困ったことに自社で類似作品連発。
それどころが無意味に続編も連発。
レンタルビデオ店の棚には常にそれっぽい作品が並ぶ事態となった。
そしてそれに箔をつけるかのように書かれている「96時間製作陣」というキャッチコピー。
本作らそんな『96時間』製作陣と『ワイルド・スピード』出演者が手を組んだカーアクション映画。
側だけ見ればこれほど素敵な方程式もない。
正直なところ「製作陣を売りにしている映画にロクなものはない」というのは映画ファンからしたらほぼほぼ常識。
俺も嫌というほど痛い目を見てきただけに経験や覚悟は決めていた。とはいえこの時期他に観たい映画が散々公開されているだけあってDVDでも見るかどうか決めかねていたのだが。
毎度の通りに試写会が当たってしまった。
まぁ嬉しいことは嬉しいし、自分で金払う気が起きないものこそ試写会の意義がある!!
と自らを奮い立たせた。
やたら試写会を応募していた必死さが多少気になったものの「全国ロードショー決定 & MX4Dなどの特殊上映もある」という状況からしてまぁまぁな佳作だろうと踏んでいた。
それでも用心に越したことはないとかなりハードルを下げて観賞した。
…上映後。90分という観賞時間が10倍に感じるほどの苦痛に襲われた俺は翌日若干体調を崩した。
しかし映画は褒めちぎるのが俺のポリシー。
書くべきか迷ったのだが被害者を1人でも減らそうと今回の記事に踏み切った次第だ。
というわけで『スクランブル』が気に入った方はこの先からは一切読まない方がいい。
俺がズレてるだけかもしれんし。
そんな交通事故のようなあらすじ。
主人公フォスター兄弟は世界を股にかける高級クラシックカー専門の強盗。兄。左。アンドリュー。頭脳担当。
弟。右。ギャレット。メカニック担当。
異母だか異父兄弟。
ちなみに話には全く絡んでこない死に設定。
今日もワイスピに触発されたかのような手口であっさりと車を盗み出すのであった。
しかしその車はマフィアのものだった。
あえなく捕まってしまった2人は「敵対するマフィアの車を盗んでくるから命はマジ勘弁」との条件を出す。そしてなんなくおっけーを出すマフィアであった。それを鵜呑みにするマフィアってどうなのか。
とりあえずこの作戦は2人じゃ無理だ、とのことで劣化オーシャンズ11なメンバー集めを開始する兄弟。
大抵メンバー集め描写は盛り上がるものだが本作では特に見せ場ないので省略します。
しかしド派手さだけを取り柄にやってきた兄弟。
あえなくインターポールに目をつけられてしまう。
果たして兄弟は助かるのか?
2つのマフィアはどうなるのか?
4つの無能な勢力の交差点がここに完成。
「大方全て計算通りなんだろ…結局」という観客の声もそこそこに
まるで茶番な計画が幕を開ける!!なかなかシュールな1枚。
…というもの。
なんか書いてて頭痛くなってきたな!
話はありきたりで単純だがそれは俺からすれば評価点だ。
本作で数少ないひとつの!
この手の映画に複雑さは求めていない。
わかりやすくアクションを絡めて派手にやってくれればオールオッケー…なのだが
軽くあらすじでも触れた通り本作では既視感のオンパレード。
まぁジャンルが被れば似たような場面が出てくるのは致し方ないところではある。
しかし本作ではあまりにもオリジナリティが皆無。
代わりに「こんなもんで満足するだろ感」が満載だ。
一言で言えば「ワイスピとオーシャンズ11を足して雑味成分を盛りに盛った挙句に×0.1」したような出来。正直お粗末だ。
序盤の車泥棒のシーンや中盤の見せ場のつもりの飛行場のシーンはワイスピから熱気と金遣いを抜いたようなもの。
キャッチコピーからして同じようなものを期待しているとはいえあまりにもおざなりすぎる。
制作費云々を抜きにしても手抜き感がありありと見て取れる。
それが顕著なのが主人公チームのメンバーの構成だ。
兄弟を筆頭にまずは兄の恋人。ステファニー。
プロスリ師な女。弟の恋人候補。デビン。そんな4人の集合図。
髪型くらい変えろ!!
見分けつかん!!!!
他には爆破担当のデブ。
とってつけたような無能。可愛げ一切なし。
命に関わってるんだから真面目にやれ!
あとはえーっと、名もなきドライバーが5人くらい。背後にいるやつら。マジで名前出てきません。
もう判を押したありきたりさ以下だ。
この部分はアイデアと見せ方次第でどうとなるだけに擁護は不可能。
それでもアクションが派手ならまだなんとかなるのがこの手の映画だが。
全く本気さが見られないどうしようもなさ。
人を殴るにしても車を走らせるにしてもそこにはキャラとのリンクが必要不可欠。
「これこれこういう理由があってこいつはこれをやっている」という流れがあって然るべきだと思う。
しかし本作にはそれが全くない。
アクションに感情が乗ってないとでも言おうか。
ここでも「これでいいんだろ」感が透けて見えてくる。
一応車が走ったり跳んだりはするのだが見ていても「あぁ…そう…」としか言えない。
そして犯罪サスペンスとして必須な伏線に至っては目を当てられない雑さ。
作戦名「行き当たりばったり」というのはよく見る描写だが、それにしても酷すぎる、
そもそもキャラが薄すぎて「流石」と思えない。
序盤に言われていた「なんちゃら走法」やら「プロポーズ」も終盤で雑に処理する始末。
本来無条件で熱くなるはずの場面で失笑しか漏れないしょうもなさ。
とにかく有名作から良いところどりしようとしたらそれらが全て裏目に出てしまった失敗作。
ストーリーは悪い意味で雑。
キャラの描き分けどころか性格づけすら出来てないおざなりさ。無駄な多さ。
気持ちが伴わないアクション。
もう悪い部分を煮詰めたような状態。
トータルで「茶番」と言うしかない出来だ。
確かに世の中にはもっと酷いB級映画は山ほどある。
準新作の棚にいつの間にか出現するようなものとさほど変わりはないだろう。
それでもここまで全国で大々的に公開されるようなことはなかなかない。
休日に酒でも飲みながら観た分にはなにも思わなかっただろうが、このハードルの高さでは粗が目につきすぎる。
まぁクラシックカーマニアなら多少は耐えうるかもしれんが。ここはさすがに豪華。
そこと西川貴教の主題歌だけは良かった。
Takanori Nishikawa feat.Shuta Sueyoshi (AAA) 9/19配信リリース『BIRI x BIRI』(movie ver.) - YouTube
日本限定の主題歌は毎度賛否ある中でも
今回はポスターと同様に圧倒的「賛」だ。
余談だが本作観賞後に思ったことは
「存命なら間違いなく主演はポール・ウォーカーだっただろうな」だった。公私ともに車好きな彼ならノリノリで出演していたことだろう。
それならスター性でまた違った作品になっていたであろうことは想像に難くない。
製作陣の力の入れ方も違っていたかもしれない。
いろいろと哀しくなる作品でもあった。
というか主演のスコット・イーストウッド。
親父は伝説の西部劇役者「クリント・イーストウッド」ワイスピでは「ポール・ウォーカー」の代替キャラ。全てが、BREAKする。『ワイルド・スピード ICE BREAK』ネタバレ特盛り感想文。 - 高速回転する方舟の片隅で。
いろいろと比較されることが多そうだが
まぁなんだ、頑張ってほしいな!
こんな記事書いておいてなんだが!
俺は応援してるぞ!!
悪いのは脚本家と監督だ!!
ドンマイ!!スコット!
ありきたりな予告↓
『スクランブル』予告編 9月22日(金)公開 - YouTube
ありきたりなtwitter↓