高速回転する方舟の片隅で。

勢いしかない駄弁り映画ブログ。

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』感想。ネタバレあり。

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今目覚める、千年龍の力。

漢気を込めた拳で家族愛を護り抜け!

熱量と異形さはシリーズ随一。

ジャンルを飛び越える満漢全席映画!

10回は度肝を抜かれるぞ!覚悟しろ!

 

\ Next MARVEL's HINT!/

「ドラゴン」

 

 

面白いです。

他作品との繋がりはかなり薄め。

なのでMCU入門編としても。

ただ画面の情報量が非常に多いので人を選ぶ恐れがあります。

賛否分かれそうな傑作。

大画面映えするのでぜひ劇場へ。

オマケ映像は2つ。最後までどうぞ。

 

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「功夫(カンフー)」

ご存知、中国が誇る格闘芸術である。

文化を飛び出して世界の一般常識レベルにまで昇華された人類の叡智でもある。

「ブルース・リー」「ジャッキー・チェン」「ドニー・イェン」などが繰り出すそれに心を奪われなかった少年はいないだろう。

ご多分に洩れず俺の大好物である。

 

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「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」

ご存知、アメリカが誇る一大大河である。

多数のアメコミを実写化、それを集結させるという永久機関で世界を熱狂させ続ける人類の財産。

2008年公開の『アイアンマン』に始まり2019年の『アベンジャーズ / エンドゲーム』で大幅な一区切り。

現在では新たな世代フェーズ4の幕が上がっている。

ご多分な大好物その2。

 

そんな2つの歴史が今、邂逅する。

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『シャン・チー/テン・リングスの伝説』

MARVELが描く新たなヒーローは「マスター・オブ・カンフー」の異名を持つ男。

ワクワクするなというの方が無理な話だ。

なにやら本国ではお偉いさんが「実験作」と発言したことが問題になっているらしい。

アジア人メインで構成されている作風もあって邪推しかねない。

しかし本作を見ればわかる。

間違いなく問題作ではある。

 

そんな中国4001年目なあらすじ。

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何処にでもいる駐車係の男。

彼の名は「ショーン」

今日も学生時代からの友人「ケイティ」と共に平穏な日常を送っていた。

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他愛無い話をしながら働き、仕事が終わればカラオケ。

平凡で幸せな暮らしが続くはずだった。

しかしとある日。

いつものように出勤のためにバスに乗り込んだ2人。

そこにはどう見てもガラの悪い男達がいた。

しかも自分を見るなりゴリゴリに絡んでくる。

それも「ペンダントを寄越せ」と。

戸惑う暇もなく実力行使に出る男達。

しかしショーンにはとある秘密があった。

ピンときた彼は乗客が引くほどの体術を電撃披露!

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ほぼ無傷で全員を制圧。

しかしすんでのところでペンダントは奪われてしまう。

「これはマズい。妹にも伝えないと」

矢継ぎ早に事情を尋ねてくるケイティに

「実は俺は10代の頃まで父に殺し屋として育てられた」

「初仕事のときにそのまま逃げてアメリカにきた」

「もうひとつのペンダントを持っている妹が危ない」

「ちなみに本名は『シャン・チー』だ」

などと爆弾発言を連発!

その勢いのまま妹の住むマカオを尋ねてみればそこは地下闘技場だった。

どうやらダークウェブで栄えている非合法の賭け場とのこと。

話もそこそこにファイターとしてヘッドハンティングされるショーン。

なにやら先ほどのバスでの大乱闘がネットで大バズりしているらしい。

「だから君も闘ってね!」と理解が追いつかないままリングに立たされてしまう。

そこに「凄腕の殺し屋」がリングイン。

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彼女こそが妹の「シャーリン」であった。

とにかく話をしようとする兄。

息つく暇なく命を取りにくる妹。

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どうやら家出の際に置いていかれたことを死ぬほど恨んでいるらしい。

「まぁそりゃそうだよなぁ…」と思う間もなくその場に武装した集団が殴り込みをかけてくる。

狙いはシャーリンのペンダント。

とにかく武には武で!精神で立ち向かう2人。

その戦闘力さすがにズバ抜けていた。

しかし謎のリングがその勢いを止める。

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悠然と現れる謎の男。

それは2人の父親であった。

 

 

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「シュー・ウェンウー」

権力と地位を求める野心家。

国際的犯罪シンジケート「テン・リングス」の長でもある。

今日も他勢相手に三国無双さながらな殴り込みをかける日々。

そう、彼には圧倒的な力があった。

それは拾った不思議な「リング」によるもの。

オマケに不老不死となるほどのアイテム。

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これさえあれば世界を獲れる。

そんなある日。

生きている竹林とも言うべき魔境で迷う一行。

命からがら生き延びてみればそこは幻の村。

そして一人の女性と出会う。

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「イン・リー」

押し問答もそこそこにすぐさま武力行使に出るシュー。

しかしその女性は只者ではなかった。

大地震える太極拳で沈められる。

リングを駆使してもそれは変わらない。

聞けば「龍の力」を持っているという。

いつしか恋に落ちる2人。

村を去り、子供も2人授かった。

組織はますます大きくなり順風満帆な日々だった。

 

しかし過去はそれを許さなかった。

シューが留守の日を狙って敵対組織が殴り込みをかけてくる。

いかに強いインであっても他勢に無勢。

命を落としてしまう。

ここから運命は歪む。

愛する妻の死により力に溺れるシュー。

「力には力を、血には血で償いを」とばかりに敵対組織を次々と血祭りにしていく。

そのためには息子も利用する。

厳しい修行を与えて殺しのイロハを叩き込む日々。

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いつしか息子は組織随一の殺し屋に成長していた。

しかし行き過ぎた教育の所為もあってか息子は初陣の際にそのまま行方をくらませる。

数年後、それを追うように娘もいなくなってしまう。

その隙間を埋めるように暴力に傾倒するシュー。

そんなある日、亡き妻の声がした。

「彼女は自分を呼んでいる」

そう確信した彼は彼女の故郷を探すことにする。

しかしそこは普通には辿り着けない幻の村。

行き先を知るためには子2人に預けたペンダントが必要だった。

居場所は随時把握している。

だがそれぞれ自分の力になる気はなさそうだ。

それならどうするか?

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「私には暴力がある」

2人とペンダントを手元に引き寄せに動くシューであった。

一も二もなく娘が経営している地下闘技場へ殴り込みをかける。

そこで成長した自慢の兄妹と再会する。

殺すつもりなどなかった。

しかし見逃すつもりもなかった。

捕らえられて実家へ拉致される一行。

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かくして世界を揺るがす地獄の帰省が始まるのであった…

 

 

【特筆すべき「アクション」】

MCUではこれまで「アメコミ」というジャンルに何かをかけ算してきた実績がある。

『アイアンマン』は超化学。

『キャプテン・アメリカ』はポリティカル。

『マイティー・ソー』は神話の世界。

『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』はスペースオペラ。

『ドクター・ストレンジ』は異次元の魔術。

『ブラック・ウィドウ』はスパイサスペンス。

枚挙に暇がないが、この他ジャンルさがあるからこそ共演したときの興奮が倍増する。

本作でかけ算されるのは「中国文化」

アメコミを通して「異文化」を描くという面では『ブラックパンサー』に近いかもしれない。

しかし本作でも負けじと歴史が炸裂している。

それは「功夫」であり「武侠モノ」であり、「ファンタジー」でもある。

バス車内や竹の足場で行われるのは地に足の着いた徒手空拳劇。

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リングが絡めばそれはワイヤーアクションで演じられてきた空中戦になる。

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極め付けはラストに龍が登場する。

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まさに満漢全席な豪華絢爛さ。

冒頭で触れた「実験作」というのはあながち間違いではない。

ハリウッド映画でここまでフルコースで中国文化をブチ込むというのは前代未聞だろう。

 

MARVELにもこちらに先んじてカンフーで戦うヒーロー『アイアン・フィスト』がいる。

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Netflixによる「路地裏の守護者」のうちの1人。面白いよ!

こちらはこちらで大好きだが、なにせテーマである中国には四千年の歴史がある。

到底ドラマ一本で描き切れるものでもない。

それを示すかのように本作では休む間なくなにかしらの要素がスパークしている。

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ジャッキーやドニーさんを追い続けている俺も大満足できるクオリティが本作にはあった。

バキバキに人権無視されていた香港アクションのヤバさはCGでフォロー。

最新鋭を用いて往年へのリスペクトを随所に散りばめるあたりさすがと言える。

もしかしたらMARVELは『ムーラン』の撮影時にドニーさんやジェット・リーに意見を求めたのかもしれない。

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ディズニーに本格派が!なファンタジー大作。

その余波もあってか本作のクライマックスには龍が登場する。それも2頭も!!

龍(東洋)と竜(西洋)がシバキ合うという前代未聞のラストバトルが繰り広げられる。

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イメージ図。

忖度なしで熱量もサイズもこれ!

今まで優等生然としていたMCUでは暴挙とも言える展開かもしれない。

実際、劇場では「俺は何を見ているんだ!?」とでも言うような爆笑が起きていた。

ただ常に上昇志向なMARVELである。

東洋と西洋のドラゴンが殺し合うというありそうでなかったことを実現させたのは怪獣ファンすら手駒に取るサプライズだったのかもしれない。

まさかこの時代に大画面で王道功夫ばかりか「トニー・レオン」「ミシェル・ヨー」が空を舞い、ラストは怪獣が大暴れするという映画が観られるとは思わなかった。

この辺りが人を選ぶと前述した理由でもある。

ただ個人的には大満足だ。

 

 

【2人の主人公】

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ショーンこと「シャン・チー」

部屋に『カンフー・ハッスル』のポスターを貼っている信頼できる男として登場する。

仕事は駐車係という堅実さも親近感が湧く。

しかしその過去はハードなもの。

殺し屋として育てられた挙句、初陣ではキチンと仕事をこなしている。

すっかり足を洗っているが、とある事件をキッカケにヒーローになる。

今までのMCUではいなかったタイプのヒーローだ。

性格は優しい。等身大と言ってもいい。

しかしやるときにはやる漢気もある。

なにせ父親との対決を前に「力には力。俺は親父を殺す」とまで言ってのけている。

実際、中盤では部下の仮面の男を本気で殺そうともしている。

「悪人でもあくまで殺さずに」という信念が見えるアベンジャーズの面々とは少し違う。

暗殺者出身であるバッキーとも、殺しを厭わないパニッシャーとも違う。

デッドプールやウルヴァリンともベクトルは違う。

「リング」や「龍の力」がない場面では常人なので、そこまでの余裕がないからかもしれない。

しかしこれがすごく斬新に思えた。

要所要所ではケジメをつける。

それでいて闇堕ちの気配はない。

もしかしたら今後の軸になる漢かもしれない。

なにせ本作ラストでは10のリングを操り「龍の力」にも目覚め、カメハメ波の構えすら披露("龍の力"ってそういう…?)する有様である。

さらに手助けがあったとはいえ怪獣を素手でシバキ倒す。

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精神的にも物理的にも頼もしいナイスガイであることは確かだ。

 

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父親のシューもある意味では主役だ。

MCUあるあるなトラブルメーカーな父親という王道でありながらもクズ一辺倒ではない。

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ちなみに問題のある父親たち。ヤバいなぁ!

まぁこちらはこちらで国際的犯罪シンジケートのトップという立場ではあるものの、妻や子供に対する愛情は確かにある。

それが「リング」の力もあり暴走してしまった。

第三者からすれば迷惑甚だしいが、当の家族目線では非常に哀しい話でもある。

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クライマックスの親子喧嘩は必見!

最後は魔物によって命を落とすことになるが、厚みがある悪役であったことには違いない。

 

 

【他作品とのリンク】

ひたすらジャンルにまっしぐらすぎるために忘れてしまいがちだが、本作もMCUの一作。

ただ新たなヒーローのオリジンということもあり、他の作品との繋がりは非常に薄い。

それでも随所にファンが歓喜するサプライズがある。

 

・地下闘技場で戦っている魔術師と怪物

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まさかの「ウォン」と「アボミネーション」である。

f:id:berserkun:20210904152826j:imageウォンさん。

「ドクター・ストレンジ」の同僚。

お茶目な性格をしているが、その腕はS級。

時空を歪ませるくらいはお手の物。

ちなみに『インフィニティ・ウォー』で貧乏であることが判明。

それがおそらく本作での闇営業に繋がる。

f:id:berserkun:20210904170856j:imageアボミネーションさん。

ハルクの天敵。

MCU2作目『インクレディブル・ハルク』よりなんと13年越しの登場。

楽屋ではウォンと親しげだったので丸くなった?

あとエラ生えた?

今後のドラマシリーズ『シー・ハルク』にも中の人ティム・ロスと共に登場予定。

f:id:berserkun:20210904153158j:image要チェック!

 

・あの人が再登場

実家に帰省するなり牢獄にぶち込まれる一行。

そこには謎の老人がいた。

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あっ!!マンダリン(偽)だ!!

『アイアンマン3』より。

国際的犯罪シンジケート「テン・リングス」のボスを騙っていた男。

作中ではトニーを憎むキリアンによって名前だけ借りたハリボテとして使われていた。

普通に逮捕されていたが、マンダリン(本物)つまりシューによって脱獄。

演技力を買われて生き延びているらしい。

その後一味と同行し準レギュラーになる。

なぜか謎生物と話せる。

 

・幻の村「ター・ロー」

現実世界と地続きでありながら、普通には辿り着けない幻の村。

そこでは異世界の門があり、魔物から世界を護っているという。

『ドクター・ストレンジ』でも言及されていたダークディメンションに似ている。

魔術とは違う形でも世界は守護されているようだ。

(というかあの世界どれだけ地球狙ってる化け物いるの?)

 

・シリーズお馴染みエンディング後のオマケ

ミッドクレジットシーン。

ラストにウォンに呼び出されたシャンチーとケイティ。

その場には2人のヒーローがビデオ通話で繋がっていた。

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「キャプテン・マーベル」

ご存知、MARVELの最終兵器。

相変わらず宇宙の治安を護っているらしい。

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「ブルース・バナー」

こちらもご存知、ハルクの中の人。

なんと人間の姿に戻っている。

(おそらく今後の話の都合や画的な問題)

間接的ではあるが、アボミネーションと共演することで役者交代してしまった『インクレディブル・ハルク』と繋がった。

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「ハルク役の方が降板」「地味に権利問題がある」などシリーズでも日陰作。

ただすごい好きなのでそのうち記事書きます。

 

・エンドロール後

シャーリンがテンリングスを建て直す様子が描かれる。

「“The Ten Rings will return.“」の文字と共に。

果たして味方なのかそれとも…

 

 

余談。

シューの右腕として登場したこいつ。

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「デス・ディーラー」というらしい。

単独ポスターもあり、公開前から異彩を放っていた。

「隠し子?」

「もしや他のシリーズのキャラ?」

「ドラマ勢と繋がりあるのかも!」

ファンの期待は高まっていた。

しかし蓋を開けてみれば最初の顔合わせでシャンチーに敗北。

そのまま見せ場もなくラストは怪物に魂を抜かれる。

テンリングス再生の手伝いポジションは片腕ソードマンに奪われる。

 

えっ?なんだったのお前!?

 

ばーさーくん (@bebebeberserkun) | Twitter