沈黙のW悪夢。『沈黙の監獄』感想。
ネタバレは関係ないあらすじ。
2億ドルがある刑務所行ってみたテロリスト達。
しかしそこにはセガールがいた!!
ストンコもいた!!
相手目線だとただの極限ホラー!!!
有言実行とはこういうことだ!!
今、絶望がマッハに加速する!!
日常嫌気がさすことも多い今日この頃。
縛りプレイを強要されがちな現代社会において「自由に生きたい」というのは人類共通の夢だろう。
「そんなことはない。楽しくて仕方ない」と言われたら返す言葉もないが!!!
「いっそのこと全てを捨てて犯罪者になろう」とまではいかないが、ワイスピのファミリーやルパンを羨ましく思うことも多い。
しかし彼らのようになるために超えなくてはならない壁の数は10や20ではきかない。
その中でもとりわけ必要な要素が「運」だろう。
これがなかったら今ごろワイスピのファミリーは一家離散してることだろうし、ルパンも数々のお宝を奪えてなかったかもしれない。
というか下手したら死んでるな!!
それだけならまだしも極限まで運がなかったら犯罪者達はどうなるのか。
そんな腐ってもセンター試験に出ないような問題に
ひとつの決定的アンサーを叩きつけるのが本作『沈黙の監獄』だ。
本作の敵となるテロリスト達。閉鎖間際の秘密刑務所に2億ドルの価値がある囚人がいることを嗅ぎつける。
武器は運び出され、看守はごく僅か。
セキュリティも最低限。
それは簡単なミッションのはず…だった。
しかし彼らには「運」がなかった。
絶望的なまでに!!
なんとその刑務所にはセガールがいた。
おまけにストンコもいた。
全ての劣勢を覆すジョーカーカードが2枚。勝ち目、ゼロ。
災害レベルのどうしようもなさ。
まぁこの御二方を知らない方はいないと信じたいが
そこまで俺もポジティブシンキングではない。
順調に出世を重ねているようなエリート様達は間違っても触れないだろう。
しかし俺のように真昼間から午後ローを齧りつくように観ているダメ人間からすれば恩人であり親友でもある。
とりあえずざっと紹介させてもらおう。
『霊長類最強の男』『歩く死亡フラグ』
『Mr.沈黙』
数々の映画にて主人公を演じる。
ほぼ全てが独立した作品ながら
どれも「過去にとんでもない経歴を持つ最強の男」役を演じる。
ラスボスすらノーダメで完膚なきまでに叩きのめすその無双っぷりはそれまでの映画の常識をひっくり返した。
様式美とも言えるその様から主演作のほとんどに独自の邦題として『沈黙』がつく。
ちなみにシリーズとして繋がっているのは『沈黙の戦艦』と『暴走特急』のみ。
「むしろそこには『沈黙』つかねぇのか…」は禁句。
同種の人間やめた方々が大集結する『エクスペンダブルズ』シリーズからの再三のオファーを断り続ける。
悪く言えばナルシズムな猿山のボス。
しかしそれこそセガール。
「ストーン・コールド・スティーブ・オースチン」
『最凶のタフ野郎』『テキサスのガラガラ蛇』
愛称は「ストンコ」と可愛らしい。
元伝説のプロレスラー。現在では俳優として活動。
『エクスペンダブルズ』では悪役を好演。
名場面のひとつであるスタローンとの禅問答は必見。
「雇い主は誰だ?!」
「お前の美容室!!」
「仲間は誰だ?!!」
「お前のママだ!!!」
ちなみにこの直後のタイマンにて勢いのあまりスタローンの首の骨をへし折るアクシデントを起こす。
その場面をそのまま使うスタローンも凄いが!
そんな「地震雷火事親父」をひとまとめにしたような名実共に『最強』と『最凶』な2人が門番をしている刑務所。
死刑より非道い目に遭うこと間違いない!!
それがテロリストならなおさら!!
結局この2人の対応に終始せざるをえなくなるのだが
もう同情してしまうほどに絶望しかない。
「おい、聞いてないぜ…」な敵。
目の前にはセガールがいる。命からがら逃げ遂せたら今度はストンコがいる。
ここまで如実に「前門の虎、後門の狼」を体現した図を見たことがない。
虎や狼なんて可愛いものじゃないが!!
あらすじとしては
「俺たちは使い捨てだ」とエクスペンダブルな会話で仲良し度をアピールする2人。
今日も暴動を起こした囚人を無表情で瞬殺するなどデキる男っぷりを見せつけていた。
所長にぐちぐち言われるも上から目線で悪びれるそぶりは一切なし。
そんな平和なときも束の間、内通者がいることが判明。
同時に2億ドルの女囚人が護送されてくる。
どこぞのハンソロばりに「嫌な予感がする」宣言した通りに所内の隙をついてテロリスト達が潜入してくる。
プランはぐだぐだなもののなんとか運に任せてさっさと仕事を終えようとするが…
どさくさに紛れて脱走する囚人達。
敵はセガール&ストンコ。
明らかにパワーバランスが崩壊した三つ巴の争いの幕が上がってしまうのであった…
…まぁ無理だな!!ご愁傷様!!
一見すればただの無双アクションにも見える。
しかしその実は漢の行持が詰まった映画でもある。
近年のアクション俳優は二極化が激しい。
『エクスペンダブルズ』という大規模な同窓会が開かれたためでもあるだろうが売れる売れないがはっきりしている。
その中での2人。
セガールは今や過去の人と呼ばれてしまっている。
同期が同窓会で一山当てたのもあるが
近年のブームの煽りを受けて演技力抜群の俳優達がアクション畑に乗り込んできたのが大きい。
「リーアム・ニーソン」「デンゼル・ワシントン」などが良い例だ。
96時間おじさん。
無傷無双おじさん。
ひと昔前ならセガールの独壇場だったような映画に次々と出演。
そしてそのどれも当然の如く出来が良い始末。
正直俺もそちらに浮気していた…というよりもはやそっちが本命になりかけていた。
ストンコもなかなか作品に恵まれずB級映画に出演する日々。
歳下でもある「ロック様」や「バティスタ」がどんどんのし上がっていくのを見守るしかない。
ワイスピや数々の主演作が大ヒット。
MARVEL映画や『ブレラン』最新作に出演。
そんなこんなで閑古鳥が鳴きかねない2人。
しかし今こうして手を組んだ。
「俺たちはまだまだ現役だ!」との声が聞こえてくるようだ!
そんな意地をぶつけられる敵はたまったものじゃないが!!
実際、腐ってもセガールとストンコ。
とにかく見所はこの2人に終始する。
人権団体すら黙らせるほどに「手加減」というブレーキがない一方的な制裁まみれ。
そのブレなさは以下のセリフに集約される。
セガール「殺してくるから、殺してる。」
この言い返す隙のない潔さ。
一例。
セガールが2億ドルの女を連れていると
よせばいいのに脱走した囚人が絡んでくる。
月並みだが「女を寄越せ」と言ったもの。
それに対して「お前のお袋で愉しめ」と破壊力抜群な言葉と共に鉛弾を全身にブチ込むセガール。
その後銃撃戦となるものの弾が切れた囚人の1人。
なんと無謀にもナイフのみでセガールに挑む。
いわば『コマンドー』から受け継がれる様式美だが
そんなことセガールは知ったこっちゃない。
涼しい顔をして腕をヘシ折った後に
「痛かったか?なんだ、弱虫だな」
と吐き捨てる。いや、痛いだろ!!!そりゃ!!
頷く他ない有能さ。
そしてそんなセガールに呼応するようにストンコ「見つけ次第、皆殺しにしてる。」
とこちらもこちらで非常に潔い。
この悪夢は劇中、幾度となく有言実行される。
鎖で雁字搦めにして首をヘシ折る所業を無表情で行ったかと思えば
セガール映画御用達のキッチンにての格闘を請け負う。
いわば「DIE所」な戦闘シーンを挟む頼もしさ。
スプレー缶を用いたお手製火炎放射器に始まり
レスラー時代を思い出すような熱湯攻撃。
果てはガスボンベにてDIYミサイルまで!
「そこまでするか!?」の連発だ。
このように2人して問答無用情け容赦なしなタフガイっぷりだが、そのキャラ付けは完璧だ。
刑務所に護送されてきた女囚人は2人いる。
片方は2億ドルの運び屋。
そしてもう片方はテロリストの内通者で敵。
その女に不意を突かれ割とボコられるストンコ。
自分から女を殴ることはしない騎士道精神の塊かと思いきや、散々やられた後に
「参ったな。惚れちまったぜ」と痺れる一言。このドM精神とも言える余裕。
女に手を挙げられてもむしろ許す優しさ。
「観ているこっちが惚れる」名シーンだ。
とはいえ男には容赦ない。
ラストバトルは内通者の裏切り者。
序盤にて仕事ができない無能っぷりにイラついていたストンコは憂さ晴らしとばかりに歓喜する。
「やっとお前をブチのめせる」と笑顔で吐き捨て、その言葉通りにその丸太のような腕でシバきまくる。
さらに軽々と掴み上げた後に『悪魔のいけにえ』ばりに懸垂器具にブッ刺す漢らしさ!!
そして一言。
カッコいいなぁ!!
意味は全くわからんが!!
しかしこの極悪とも言える所業。
最近うじうじと悩むヒーローが多い中、ここまで思い切りの良さは是非見習っていきたいところだ。
勿論セガールも負けてはいない。
ぶっちゃけこちらは平常運転なのだが
その無慈悲さは近年でも群を抜いて素晴らしい。
ラストバトル。
親玉と一対一で銃撃戦を繰り広げるものの
当然のようにお互い弾切れになる。
素手での殺し合いで勝てる相手ではないと踏んだボスは観念したように武装解除。
「これは善悪の問題じゃない。この金をどう使うかは自由だろ?」
「というかぶっちゃけ半分やるから見逃してくれ!」
という理詰めの命乞いをしてくる。
しかしそれに対してセガールは「あぁ」と生返事しかしない。
そればかりか「俺はお前を信用できない」と問答無用で拳を叩き込み一発でボスの戦意を喪失させる。即死チョップ。こうなります。
しかしこれだけでは済まさない。
いくら情けなくても敵はテロリスト。
そのまま掴み上げ、トイレ内の壁という壁に脳天を叩きつけまくった挙句に関節をキメる。
合気セガール。容赦なし!!容赦なし!!!
もうオーバーキルもいいところだが、さらには冥土の土産に俺流説教をかます。気分がノッてきたセガール。
そんな一方通行説教のオチは「お前はもう死んでいる」とどこぞの世紀末覇者流死亡宣告。
それを聞き恐怖で精神崩壊したのか
「さっき善悪は関係ないと言ったが俺は悪人だ!」
とどうしようもない懺悔を始めるしかないボス。
しかしそんな開き直りでセガールが許したことはない。
おそらくこれからも!!
「そうか。俺は善人だ」と愛想ゼロで言い放ちセンサーボムの山にボスを放り投げ大爆死させる!!!!
「いやむしろ悪魔超人じゃねぇか!!」な所業をかすり傷ひとつ負わずにやり遂げるセガールであった。
「悪人側にも事情が〜」「命の価値は〜」と言い出す方には死んでも向いていないかもしれない。
確かにその理屈は正しいかもしれない。
しかし世の中というものは思い通りにはいかない。
人生、腹立つ相手を問答無用で殺処分したい夜も来る。
本作は窮屈な俺らの代わりにそんな「超えてはならないライン」を悠々と跨いでくれる傑作だ。
とにかく終始「ホラー映画を相手目線で撮ってみた」な展開で進む本作。
「エンカウントしたら即死な青鬼が2体いる刑務所で生き延びられるか?」という実況者向けゲームな実写化作品と言えるかもしれない。
主人公補正もかかってる「青鬼に金棒」レベルな無理ゲーだとしても!!
しかしいろんな意味での漢の意地が垣間見れる、決してB級アクションと切り捨てられない作品なのは間違いない。
とにかく「1人では50点でも共演すれば100点!!おまけして120点!!」な道理を黙らせる圧力を持った傑作アクション。
やることがない昼下がりにでも観よう!!
ちなみに一番よく動いてたのは主人公側No.3なコイツ。
コリン・ファレルにそっくりだなぁ!!
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