高速回転する方舟の片隅で。

勢いしかない駄弁り映画ブログ。

あるのは度胸と愛情のみ。『ニューヨーク ザ・ギャング・シティ 明日なき2人』感想。微ネタバレあり。

f:id:berserkun:20180619205151j:image金なし、学歴なし、前科あり!

向こう見ずなバカップルの、行く末は。

そして妙に生々しい登場人物。

それもそのはず実話映画だ!!

意外にも突き刺さる掘り出し物。

 

ネタバレなし感想。

別に必見な映画ではありません。

言ってしまえば平坦な実話サスペンス。

それでも意外に響きました。

人によっては泣きかねません。

まだ新作のはずなので旧作落ちしたら是非。

観るなら吹替一択で!!

 

俺は映画が好きだ。

まぁ三日坊主なのにこんなブログを低空飛行でも続けられているのがその証明でもある。

しかし好みは異常なまでに極端。

基本的に「悪者が死ぬ回数と映画の出来は比例する」と思っている。

つまりは"完全"懲悪なアクション映画が大好き。

周りが勉学やら部活やら恋愛に精を出していた青春時代を全てステイサムに費やした、といえばわかっていただけると思う。俺の異常性が!!

そんな残念な思考を持った俺だが

この度、何の因果か本作を観る機会があった。

目を惹くアクションがあるわけじゃない。

好きな俳優が出てるわけじゃない。

元の事件に興味があるわけじゃない。

巷で話題の大作というわけでもない。

試写会が当たったわけでもない。

なによりエロいわけでもない。

観ない理由を挙げていけばキリがない。

ほぼ気まぐれだ。そんな日もあるだろう。

というか気まぐれじゃない日があるのか!?俺に!

そんな雑もいいところなあらすじ。

トミーロージーはどこの地元でもいる関わり合いになりたくないバカップルだった。f:id:berserkun:20180619205556j:image互いしか見えてないその様は幸せそのものだった。

しかしやはり悩みもあった。

金がない。

真っ当な人間なら「バイトでもするか!」となりそうなものだが

そんな真摯さを持ち合わせている2人ではなかった。

マリファナを吸いながら考えた画期的な打開策を実行に移すことにする。

それは強盗だった。

普通なら二の足を踏みそうなものだがf:id:berserkun:20180619205734p:imageバカ特有の謎フットワークで即、実行!

その流れは「店に拳銃を持って押し入る→金を奪う→逃げる」という非常にわかりやすいもの。

まぁそんな幼稚園児が考えたような作戦がまかり通る世界なら誰も苦労はしていない。

呆気なく逮捕されてしまうトミーであった。

【18ヶ月後】

保釈されてきたトミーをロージーは待っていた。

一途さだけは立派だった。

この間にロージーはなんとか職に就いていた。

そこをトミーにも紹介することにする。

「もう若くはないしな」と一応真面目に働くことを2人して決意。

その就職先は借金の取り立て会社。

面接らしい面接はなし。

それどころか社長含め社員は全員前科者。

明らかに黒よりのグレーゾーンだったが

それでも真っ当に生きる楽しみを理解していく2人。

しかしトミーには忘れられない過去があった。

幼い頃に「実家の花屋がマフィアの手で潰された」というある種のトラウマがあった。

街でマフィアを見かけるたびにそれがフラッシュバックしてくるほどだった。

不良特有の「やられたらやり返す精神」が湧いてきてしまう。

次第に仕事よりも今世間を騒がせているマフィアの裁判傍聴に情熱を傾けてしまう。

当然そうなってくると稼ぎは減る。

やっぱり予想通りに煮詰まってしまう2人。

そこでトミーは考えた。

それは常人なら決して思いつかない名案だった。

「マフィアから金奪おう!」

当然反対するロージー。しかし

「悪人から金奪うのって悪いことか?」

独自の俺ルールを目の当たりにし、あっさり懐柔されてしまう。

「なにより過去の復讐もできる!一石二鳥じゃないの!」とどこからかサブマシンガンを調達してきたトミー。

雑にも程がある情報収集の末に銃火器持ち込みNGな賭けクラブを発見。

相変わらず呆れるほどの無策で単独押し入る。

しかし運が良いのか悪いのか

あまりにも馬鹿げていて虚を突かれたのか

その「強盗」は成功してしまう。

ある意味悲劇の始まりでもあった。

すっかり味を占めた2人。

当然、調子に乗りに乗る。

強盗を重ね、ときにはこれ以上ないほどにマフィアを煽りまくる。

f:id:berserkun:20180619205905p:image金を奪い、服を脱がし、腰を振らせる。

もちろん「親父からだ!」と店に銃弾をバラ撒くことも忘れない。

そんな2人は一部世間の注目の的になった。

「ボニー&クライド」と揶揄されるくらいには紙面を賑わせていた。

f:id:berserkun:20180619205949p:imageお手本のような調子の乗り方。

しかし相手はそんな横暴を笑って見過してくれるほど生易しい連中ではなかった。

それはいよいよボスの耳にも入る。

f:id:berserkun:20180619210038j:imageフィオレルロ。

まさかのアンディ・ガルシア

とはいえ今は裁判の真っ最中。

ド派手に見せしめなどすればマスコミや警察が黙っていない。

ぐずついているマフィアを尻目にいよいよ3件目の強盗をしでかす2人。

いつもの通り目的は金だけだった。

しかしそこで手に入れたものは今までとは比べ物にならないほどのお宝だった。

それは現在の裁判でも決定的な有効打となる「マフィアの詳細な構成リスト」だった。

f:id:berserkun:20180619210120p:image

それを理解し、起死回生の一手を打つべく動く「ボニー&クライド」

いよいよ本気で黙っているわけにいかなくなった「マフィア」

ずっと黙って盗聴しているだけの「FBI」

果たして2人に明日はあるのか?

恐ろしいまでに平坦な三国時代の幕が上がるのであった…

 

前置きで書いた通り本作には斬新な「何か」があるわけではない。

人によっては「自惚れたバカ2人が破滅していくだけ」の駄作と感じるだろう。

まぁそれもあながち間違いではない。

それでも俺がわざわざ記事にするほど惹きつけられたのは変に生々しいリアルさだ。

主人公2人はどこにでもいそうなカップル。

お互いを「イケメン」「最高」「天才」「クレイジーと褒め合い、とことんまで自惚れている。f:id:berserkun:20180619210220p:image「そんな自分たちは絶対に幸せ」だと思い込んでいる。

それでも心の奥底ではどこかで「違う」と気付いている。

必死でそれを見て見ぬ振りしては何か大きなことをしようと必死にもがく。

そこでとった手段は褒められたものじゃないだろうが、似たような経験は誰にでもあるはずだ。

実際、彼らは根っからの悪人じゃない。

「悪党からしか盗まない」「誰も殺さない」

本当は真っ当に生きたいと誰よりも願っている節もある。

思いつく作戦は普通なら一瞬で棄却しかねないものばかり。

だがそれは2人なりに精一杯考えた結果。

その必死さが痛いほどに見て取れる。

無策で無謀で無鉄砲、愚直でどうしようもないが

俺は到底そんな2人を嫌いにはなれない。

ある意味棚ぼた的に手に入れた金も全て自分のために使う欲深さもない。

トミーはその愚かさから家族とは不仲だった。

実家のこと、家族のこと、過去の悲劇…その全てを弟に押し付けて逃げ続けていた。

それがずっと心残りでもあった。

その贖罪として実家に立ち寄りようやく手にした大金を置いていこうとする。

だが当然、普通の神経をしていたらそんな得体の知れない金は受け取れない。

なにより金で解決するような浅い問題じゃない。

結局、過去は変えられずに仲直りもできない。

本当は皆のような普遍的な幸せが欲しい。

彼女を招待して家族と微笑ましく食卓を囲みたい。

だが愚かな自分ではどうしていいかわからない。

もう意地で実家のポストにその金をブチ込むしかないトミー。

切なすぎるだろ! あまりにも!!

それでも「花屋を開く」夢だけは諦めきれずにラストには新天地を目指そうとする。

そんな彼氏についていくしかないロージー

それを俯瞰で見ているだけの俺が「破滅的」「愚か」だと言うことは到底できない。

マフィアのボスであるフィオレルロも

その佇まいからはほとんど暴力の匂いはしない。

むしろ孫から見れば料理好きの好々爺だ。

マフィアのイメージといえば

一にも二にも「銃火器」「暴力」だが

本作ではほとんどそれが出てこない。

確かに短絡的にいちいち騒ぎを起こしては組織がままならない。

「あぁ…現実って意外とこうなのかもな…」と再認識させられる。

「事実は小説よりも奇なり」というが

本作が実話というのも妙に納得できる。

それは役者陣がほぼ無名だからこそのリアリティなのかもしれない。

 

まぁ誰かに勧めようとは中々思えないが

俺の心の中には確かに残った佳作サスペンスだ。

それは俺も主人公達と同じく「明日がない」からかもしれない。

油断していると所々でハッとさせられる。

万人ウケはしないだろうが

何かに挫折しまくりの人間には響く。

そんな映画でしたよ。

 

 

余談。私信。

本作を鑑賞した本当の理由。

実は友人が本作で吹替を担当している。

デビュー作だからなのかモブ役だった…はず。

名前も出てこないレベルなので答え合わせが出来ない現状。これは完全に俺の予想だが

途中で出てくる名もなき黒人の同僚だろ!!

どうなんですか!?伊達さん!!

 

平坦な予告↓

4月18日(水)ゲオ先行レンタル開始!『ニューヨーク ザ・ギャング・シティ 明日なき2人』 - YouTube

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