究極の泥"死"合、キックオフ。『少林サッカー』感想。ネタバレあり。
「君はまだ、究極のサッカーを知らない。」
はい、その通りでした!!
これぞ正しいCGの使い方!!
史上最高の究極痛快破天荒エンタメムービー!!
W杯ですね。
まぁ我が家には地上波が映る機器なぞ存在しないので一切観られてませんが、その熱狂ぶりはさすがと言う他ない。
なにやら今回のW杯は最高視聴率が50%を超えたらしい。
そんな景気の良い現状に平常運転しているわけにもいかない。
今の日本代表のために俺に何ができるか…考えた結果、答えは2秒で出た。
タバコ片手に『少林サッカー』のディスクを壊れかけのPS3にぶち込んだのであった。深夜2時に!
W杯にも決して負けない熱気を持った傑作。
俺の周りの本作視聴率は120%超えだ!!
まさか本作を知らずにW杯を観てる方はいないと信じたいが、そこまで俺も野暮ではない。
少しでもこのブームに乗じて本作がもっと認知されれば幸いだ。
昨日辺りどうやら梅雨明けしたようだが
日本中で俺と同じ考えの人間が本作を鑑賞し
その熱気が湿度を吹き飛ばしたに違いない。
なぁ!!そうだろ!!
そんなオフサイドスレスレなあらすじ。
主人公シンは少林拳の布教を夢見る青年。しかしそれはなかなか叶わずに今はその日暮らしの生活。
とにかく貧乏に貧乏を極めていた。
いきつけの饅頭屋にもあしらわれてしまう始末。
饅頭屋の看板娘。ムイ。
兄弟子と共に歌で「少林拳を広めよう!」などと意気込んでもそんなものには誰も見向きしない。
持ち前の明るさと向こう見ず精神が空回りしてしまう日々。
ひとまず絡んできたチンピラを「喧嘩はご法度だからこれはただのサッカー」理論でブチのめすがあまり気は晴れない。
ボールは(喧嘩)友達。
そんな折、元スター選手のファンに出会う。
彼には昔八百長試合をしでかし選手生命を絶たれた過去があった。
お互いに人生詰んでる者同士、電撃的に意気投合。
なによりファンは先ほどの喧嘩…じゃなくて野良試合を見てシンの「鋼鉄の脚」に惚れ込んでいた。
「その脚でサッカーすれば無敵だ!」
「そうか!サッカーなら少林拳を広められる!!」
とりあえず秒で利害一致した負け犬2人。
ひとまずメンバーが揃わないことには話にならない。
それでもシンには少林拳の兄弟弟子が何人もいた。
早速「少林拳でサッカーやろう!」という無謀な思いつきを基に仲間集めに奔走するのであった。
だがそれは思うようにいかなかった。
皆それぞれ事情があり燻っていた。
「少林拳なんて時代遅れ」と一笑に付されてしまう。
それでも昔は修羅場を超えてきた仲間であり家族。
熱意と想い出でなんとか押し切りチームの体裁だけは整った。
しかしメンバーそれぞれサッカーのサの字も知らないような連中。
「これじゃダメだ」とハンはとあるチームとの練習試合を仕組む。
それは悲劇の始まりでもあった。
実は相手はサッカーチームとは名ばかりのただのゴロツキ集団。
真っ当に試合をする気はゼロ。
ボールなぞ追わずに選手への暴行に尽力。
躊躇なくレンチやハンマーを振りかざしてくるヤバいやつらだった。
当然為すすべもなくボコボコにされてしまう少林チーム。
見ていられないシンは
「こんなのサッカーじゃない!戦争だ!」
とファンに食い下がるものの
「サッカーは戦争なんだ!!」
との異常発言をかまされる。
引き続き精神共にズタボロにされる面々。
見ていられないほどの惨状に追い込まれる。
暴力や侮蔑が飛び交うそこはまさに戦場だった。
いよいよ耐えきれずに長兄が白旗を振ってしまう。
「じゃあこれ被れよ」と渡されたパンツも惨めに被ってしまう始末。
もうこれらが泣きそうになるほどに悲惨だった。
そこは間違いなく地獄。
人生で味わえる屈辱をフルダースで咀嚼した面々。
しかしそのときだった。
雲の流れが変わり
どこからかお経が聴こえてくる。
そして各々自由すぎる構えを取っている兄弟弟子達。
シン「帰ってきた…!!」
いよいよ我慢がならなかったのか
それぞれが完全覚醒!!
"無敵鐵頭功(鉄の頭)"
"旋風地堂腿(旋風脚)"
"軽功水上漂(軽功・空渡り)"
"金鐘罩鐵布衫(鎧の肌)"
"鬼影擒拿手(魔の手)"
完全に昔の姿が蘇っていた。
こうなってしまえば敵はいなかった。
負け犬達の怒涛の後半戦、キックオフ!!
燃えるなぁ!!!
かくしてピンチを絆で乗り越えた面々。
勢いそのままに全国大会に出場することにする。
まぁ究極のサッカーを知らないチームは相手ではない。
天井知らずの身体能力と底知らずの絆で悠々と決勝まで駒を進める。
もう有頂天だった。
しかしそれは仲良しだったムイとのすれ違いを生み出してしまう。
シンの明るさと強さに惚れていたムイ。
そんなムイを友達としてしか見ていないシン。
お互いにモヤモヤが残ったまま決勝前夜が過ぎていく。
そんな状態で良いパフォーマンスが発揮できるわけもない。
加えて決勝相手は只者ではなかった。
大会を五連覇しているツワモノ達。
それもそのはず、チームメンバーは米国の違法薬物で極限まで身体能力を引き出された改造兵士達。「チーム・デビル」の名に恥じぬオーラ。
禍々しい!!
そしてそこのオーナー。
ハン。ファンとは昔から浅からぬ因縁を持つ。
絶対に負けられないのはこちらも同じだった。
そんな中でいよいよ開催される決勝戦。
開幕早々に身体能力の高さを見せつけられる少林チーム。
ドーピングの前にはさすがの少林拳も歯が立たない。
一人、また一人と散っていく仲間達。
このままやられっぱなしで終わるのか?
あの泥水を啜る日々に戻ってしまうのか?
果たして友情、努力、そして愛はドーピングを超えられるのか?!
究極の延長戦のホイッスルが鳴る!
公開から16年経つ今観返しても最高な本作。
むしろ多少大人になった今だからこそ響くものもある。
当時はその「ド派手!!」としか言えないアクションに興奮した。
もちろん今でもその試合ならぬ「死合い」は大好きなのだが
それ以上に人間ドラマが胸に刺さる。
人生のドン底中のドン底を味わっている面々。
そうそう思い通りにはいかないのが人生。
わかっていても惨めな気持ちはツラいもの。
前半では並みのヒューマンドラマがマシに見えるほどに現実を叩きつけられる登場人物達。
辛酸なんて甘いものではないほど最低の日々。
それを真っ当な「友情・努力・勝利」で打ち破る。
シンの「夢を諦めたら人生じゃない」との言葉は楽観的かもしれないが、その底なしの明るさには非常に救われる。
古い価値観、暑苦しい根性論かもしれないが
それを有言実行していくシンの姿には時代を超えた輝きがある。
それに引きずられるように兄弟達も次々と漢気を爆発させていく。
「やると決めたら最後まで付き合うよ!」と言わんばかりに!!
どいつもこいつもいい顔してるなぁ!!
隠し味程度に抑えられるムイとの恋愛模様も程よく苦くて切ない。
すれ違ったまま決勝に進むだけでもツラいのに
チームメイトが立て続けに倒れ試合続行すら危うい事態。
しかしそんな窮地にムイが駆けつけてくれるベタさ。
さらにはその太極拳でピンチをチャンスに変える熱さ。
恋愛映画としてもスポ根映画としても満点だ。
2人が手と手ならぬ「手と足」を以って放つ究極のアンサーには感涙必至。
伏線などという高尚なものではないかもしれないが
全てが丸く収まる痛快なラストシュートには当時の記憶が蘇ってくる。
思えば本作を初めて観たのは小学5年生の頃。
当時も現代に負けない映画フィーバーだった。
『ハリー・ポッターと賢者の石』『千と千尋の神隠し』などが立て続けに公開されていた。
もちろんどちらも劇場へ行ったが、当時の俺は冷めたクソガキだった。
素直に興奮すればいいものをどこか斜に構えて観ていた節がある。
いや、もちろんどちらも最高に面白かったのだが
あくまで俺の想定の範囲内での100点だった。
しかしそんな小さすぎるプライドは本作で物の見事に消し飛んだ。
本作には枠組みなど軽く超越する最高さがあった。
最初から最後まで「面白すぎる!!」の連続。
人生初の100点超えを叩きつけられた映画だった。
少年漫画をそのまま実写化したような「友情・努力・勝利」の三本柱。
それを荒唐無稽ともいえるCGで包み込む。
当時でもギリギリだったしょうもないギャグを間に挟みこみ、出てくるものは全て汚い。
どれもこれもが俺の人生において衝撃的すぎた。
というか今観ても十分衝撃だが!
シュートしたら虎が出るんだぞ!すごい!!
普段は自分の意見を押し殺していた俺が我慢できずに何度も劇場へ足を運んだほどにハマった。
人生で初めてリピートした映画という意味でも俺の中で燦然と輝く本作。
最初から最後まで全く飽きないという映画体験も初めてだった。
5回ほど劇場で観たがDVDでも擦り切れるほどに観返しまくった。これも人生初だった。
思えば俺が低偏差値映画を好むようになったのは本作の影響かもしれない。
まぁ様々な意味で俺の童貞が奪われたのは間違いない。
とにかく未見の方には是非観てほしい大傑作。
どこを切っても清々しいまでに王道しか出てこないが
ここまでド直球にベタを叩きつけられたら
こちらはもう黙って見届けるしかない。
勝つ為のサッカーも勿論大事だ。
しかしそれも度が過ぎてしまえば「チームデビル」のようになってしまうかもしれない。
引き換え少林チームの「生きる為」「仲間の為」のサッカーはこれ以上なく格好良い。
なにより観ていて気持ちが良い。
そんな大切なことを教えてくれる教科書映画。
サムライブルーもいいが
少林イエローも忘れるな!!
今こそ観よう!!
何かを忘れた夜に!!
滾る予告↓
少林サッカー(日本語吹替版)(プレビュー) - YouTube
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