飲んで吸って殺して、欺いて。『アトミック・ブロンド』感想。バレなし。
「闘うヒロイン特集」第二弾。
恵まれた環境からまさかの豪速変化球。
誰もが思う「予想と違う!!」
映画通ほど騙される。
それでも面白い不可思議傑作。
今最も地球上で漢気が爆発してる女性といえば。
やはりシャーリーズ・セロンを置いて他にいないだろう。
「美しい」としか言えないそのご尊顔。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』では敵、味方、性別を超越した圧倒的カリスマ性を発揮。
軍隊長「フュリオサ」もはや主人公。
『ワイルド・スピード ICE BREAK』では今まで全ての元凶とも言える最悪なラスボスを演じた。
「サイファー」
スーパーリケジョな天才ハッカー。
そんな大傑作に立て続けに出演した後の本作。
期待するなという方が無理だ!!
さらに監督は『ジョン・ウィック』のアクション監督にして『Deadpool 2』を監督することが決定している「デヴィッド・リーチ」
共演者には『X-MEN』シリーズの「ジェームズ・マカヴォイ」
この俺の大好物のフルコース、というか一流どころのロイヤルストレートフラッシュ状態。
2017年のマストの一本といって差し支えなかった。
そしてまぁよくあることで試写会が当選した。
ウキウキでいち早く鑑賞させてもらったのだが
観賞後の感想は「思ってたのと違う」だった。
いや、決してつまらないわけではない。
今回はありがたいことに2回試写会が当たったのだが
観れば観るほど味が出て来る傑作だ。
そんな観客すら欺くあらすじ。
主人公ロレーン・ブロートンは超凄腕のスパイ。
MI6所属にして情報収集、近接格闘のプロ。
出来るオンナの1日は氷風呂から始まる。
今日のお仕事はMI6の上司とCIAのお偉いさんに任務の報告をすること。
とりあえず取調室に呼び出されたものの、ロレーンに従う気はゼロ。
思いっきり煙草を吹かした挙句に悪態を吐き捨てるロレーンであった。
満点のオープニングだなぁ!!!
映画のつくりとしては「ロレーンが行った任務の回想聞く」という体で進んでいく。
つまりほぼ主人公が死なないのは確定してるようなもんだが
まぁシャーリーズ・セロンが死ぬわけはない。
その任務とは「ベルリンで殺された同僚の死の真相を暴いてこい」というものだった。
そしてそれには全世界のスパイの情報が詰まった「リスト」が関わっているらしい。
どうやら冷戦が20年長引く物騒な代物とのこと。
ちなみに「リスト」は腕時計にカモフラ。
リストとリスト(腕)をかけたシャレです。
現場に急行するものの、そこは'89年のベルリン。
東西問題で非常に不安定な場所だった。
とりあえず明らかに怪しいやつらを車を横転させて殺害するなどド派手な活動に勤しんでいたところ、1人の漢が接触してくる。
デヴィッド・パーシヴァル。
情報で酒が飲める集会所を開いていたり乱交パーティしたり腹の底から人生楽しんでるナイスガイ。
この地での案内人兼相棒としてタッグを組むことになるが…
クールなロレーンとウキウキデヴィッド。
その影には怪しげな女スパイの姿があった。
デルフィーヌ・ラサール。
さて、リストの行方は?
誰が味方で誰が敵なのか?!
三つ巴なのか四つ巴なのか孤軍奮闘なのか!?
自分以外は誰も信じられない!!
疑心暗鬼で人間不振な泥沼の闘いが幕を開ける!
…というもの。
上記した通り舞台は'89年のベルリン。
東西でややこしいことになっていたらしいが
正直なところ詳しいことはよくわからん。
そんな俺の心を見透かしたようにオープニングで
細々と当時の社会情勢を説明した後に「これはその物語ではない」と注釈が入る。
素晴らしいなぁ!!
本作の見所はそんなお堅いものではなかった。
一言、シャーリーズ・セロンの美しさ。
度々顔のアップが抜かれるのだが、
もう見惚れるしかない美麗さ。
…かと思えば青アザ流血上等な血みどろファイトを繰り広げる。
物語が進むにつれ顔面がボッコボコに。
そして惜しげもなく脱いだと思えば
ソフィア・ブテラとの濃厚な絡み。
目覚めるしかない!!
さらには酒を煽り
煙草を吸いまくる。
観てるこっちが悪酔いするほどに!
正直、全編シャーリーズ・セロンのアイドルPVと言って差し支えないほどだ。
しかしこの男女平等が叫ばれる時代。
こういう映画が出てきたのは非常に素晴らしい。
考えてみればどれも今までエクスペンダブルズな俳優陣やトム・クルーズがやってきたことだ。
それが女性でもなんら問題なく成り立つことを証明した。
つまり本作ではカッコいいセロンが暴れまくってくれればオールオッケーだ!!
かといって男性が蔑ろにされているわけでもない。
相棒のデヴィッドは男が惚れる漢な仕上がり。
ギブスを巻いた異様な出で立ちで登場。
こちらも飲んで吸ってのやりたい放題。
心底楽しそう。
まぁつまり本作はキャラ映画とも言えるだろう。
そしてR15指定なだけあって全てにおいて手加減はない。
例えば全篇に漂う極彩色のビジュアル。
『スーサイド・スクワッド』を連想するのような蛍光色のオンパレードなのだが
これがとにかくめちゃくちゃ綺麗。
それにより罵詈雑言すらカッコいい奇跡が起こる。
しかしそんな中での闘いは非常に泥くさい。
『ボーン』シリーズから受け継がれる身近なものを利用した殺人術のオンパレード!
確かに女性が男相手に躊躇していられるような甘い状況ではない。
むしろ「男は引っ込んでろ!!」と言わんばかりの暴れっぷりを見せつける。
鈍器で殴打する。血は吹き出る。
挙句には車で撥ねとばす。
終始、問答無用!!
さらに中盤では映画史に残る圧巻の「長回し」がある。
体感では10分ほどだが、これがもうとにかく凄い。
手始めには階段での高低差アクション。
階段での印象的な長回しアクションといえば『トム・ヤム・クン!』が挙げられるが死屍累々の階段バトルからの一騎打ち。
「10年に1人のアクション俳優」トニー・ジャー主演2作目。
Wikipedia曰く「全編にわたって常人によるものとは思えない程のアクションシーンが連続する」傑作。こちらもこちらで必見。
しかし本作はそれとはまた違った素晴らしさがある。
前述した通りアクションのエグさ、そして多様さ。
なんと本作の長回しではカーアクションすら巻き込む!!
マジでどうやって撮ってるのか不明。
その地で繰り広げられるスパイ合戦はかなり渋い。
大抵この手の映画だと先が読めたりもしてしまうのだが、本作ではそれがほとんどない。
誰が味方で誰が敵なのか。
最後の最後にストンと落ちる快感が倍増だ。
以上の
・極彩色のビジュアル
・泥くさいアクション
・渋いスパイ戦
この相反しかねない3つの要素を「80年代」で無理やり包み込む。
思えば近年ではリバイバルブームでもある。
やたらと映画のサントラや予告で懐メロが流れる時代だが、本作ではそもそも舞台が80年代。
それを最先端の技術でやたらスタイリッシュに映像化しているわけで
もう独特の魅力に満ち溢れている。
いわば『ジョン・ウィック』の姉妹作とも言える
別ベクトルのような同種のような。
クロスオーバーしても違和感はなさそう。
少し残念だったのはせっかくソフィア・ブテラを使ったのにアクションがほぼゼロだったこと。
『キングスマン』より。
フュリオサvsガゼルを期待していただけに。
余談だが、エンディングに入りそうなタイミングが3回くらいあったのも気になるといえば気になる。
サスペンスものでは後半にネタバラシが連続で入り込んでもたつくのは仕方ないといえば仕方ないが
まぁそれも様式美ということで!
トータルで言えばハマる人はとことんハマる不可思議な傑作だ。
割と惨いアクションもありデートにはあまり向いてないが、友人同士で行くにはもってこいだ。
むしろ女子会前のウォーミングアップには最適かもしれない。
そのお洒落さには女子こそ惚れる。
男はただただひれ伏せ!!!
新世代な80年代に酔いしれよう!!
お洒落な予告↓
非洒落なtwitter↓